昔のパソコンと耳音響放射


 

昔のパソコンと耳音響放射

 

 開業5年目(1996年)に、弘前大学医学部第12回卒業生・同級会記念誌に記載した原稿を改編して掲載した。

 弘前駅裏城東地区の、地下道を出て2,3分のところにある小さな建物の2階を借りてのビル開業で、当時、3台のパソコンが繁用されていた。1台は市医師会からリースのNEC製ノートパソコンで、Windows NTとWindows 95が搭載され、主に医師会検査センターからのデータ通信に使用していた。1台は、DPOAE(歪成分耳音響放射)を測定するためのHewlett Packard製デスクトップ型パソコン、残りの1台はAT互換機のタワー型パソコンで、スライド作成用のポラロイド製デジタルパレットとMicrotek製スキャナ(ScanMaker Ⅲ)を接続していた。

  なお、耳音響放射(Otoacoustic emission:OAE)は、1978年に英国のKemp博士により発見された検査法で、入力された音によって蝸牛で作られた振動が蝸牛から中耳を通して外耳道内で音として測定される一連の現象をいい、誘発耳音響放射(EOAEまたはTEOAE)、歪成分耳音響放射(DPOAE)、自発耳音響放射(SOAE)があり、臨床的には歪成分耳音響放射(DPOAE)が普及している。

  図右は、日本耳鼻咽喉科学会乳幼児委員会が作成した耳音響放射検査のメカニズムについて、歪成分耳音響放射(DPOAE)を例にして解説したもので、詳細は省略する。

 リオン社を通じて英国から直輸入した耳音響放射検査用ILO-92を自作パソコンに接続した状況を図左に示した。ILO-92は閉院時まで使用したが、途中でDOS-Vで動くプリンターのインクを入手出来なくなり、モニター画面を直接撮影してプリントした。

 1996年は、自宅に沖電気製if 800を購入してから10年近くで、自宅にはIBM製ノートパソコンを1台と、ほとんど使うことのなくなった沖電気製の2台目のデスクトップ型パソコンが置いてあった。

 1995年11月に、周辺機器の操作が簡単になるという触れ込みにつられてWindows 95を導入後、色々なトラブルが起きて困った。買ったばかりのスキャナが動かず、半年間は宝の持ち腐れになった。家内には、パソコンは何もわからないからとフリーパスですが、息子と娘には、買う前にちゃんと調べたら?と苦言を呈された。また、学会発表の前になってデジタルパレットがWindows 95に対応していないことがわかり、折角準備した機器が使えないことになった。たまたま、耳音響放射測定用に、測定できる最低の仕様でいいから20万円以内に押さえて、と言って購入したパソコンがWindows 3.1をインストールしてあったので、オペレーターに試してもらったところうまく動いたときにはほっとした、と記載してある。

 

 おわりに

 

 パソコン自作はWindows 95の頃からで、DOS/Vで動くパソコンは、閉院までOtodynamics社製耳音響放射検査装置ILO92のボードを組み込んで使っていた。

 最後の自作はWindows 8.1をインストールしたパソコンで、その後、Windows10にバージョンアップしたが、自作もそろそろ卒業と考えて、保存してあった古い周辺機器、ケーブル類を資源ごみに出して処分した。

 パソコン本体も当初の大半を処分したが、近年のハードディスクは大半を手元に残し、ノートパソコンのハードディスクも、センチュリーの「裸族の頭」という変換アダプターをUSB接続し、データを活用している。